むしり男と3わのヒナ

やっぱり家族間で雑談などしていると旦那さんの毛量の話に絶対触れると思うのですけれど、”適度にあったほうがよい”と思われているのが世の中の本音と考えられていますから、旦那さんとしてもたとえ今は心配なくとも将来への不安が少なからずあるわけです。まして彼の場合、我が子が娘なのでなおさらのようです。


『どうせなら前からいきたいよな・・』と考えながら『なるべくてっぺんは避けたい。むしったみたいになるのはイヤだ』というので、最悪そうなった場合は3羽ほどヒナの居る巣を乗せてみたらどうですかと提案してみました。思いつきで乗せてみたものの、最初はエサ欲しさにしきりにピヨピヨ鳴くヒナをただ疎ましく感じていたのが、時が経つにつれ成長していき、やがて飛び立つ練習など始めるようになります。何度も何度も肩に落ちるヒナたち。男はヒナが落ちるたびにそっと両手で受け止めて巣に戻してやるのです。ある日またいつものようにヒナたちが練習していると、あっ、落ちると思ったその瞬間、ヒナの羽根はそっと目のあたりをかすめ、前方高く飛んでいくではありませんか。その後を1羽、2羽・・とうとうヒナたちは飛べるようになったのです。ヒナたちは男の頭上を3度回るとあたたかいお日様のほうへ飛んでいきました・・とか。


とこんな感じのことを話すと『もう会えないの?』と旦那さんが普通に聞くので、春になったらヒナたちが戻ってきて、その頃には男の毛量もいくらか増えているんだけどヒナたちのために結局むしってしまうという”おしまい”になりました。旦那さんも『そりゃむしっちゃうよなあ』としみじみ。お父さんとして男として、外見の豊かさよりもこの大ウマシカな話を聞いて『もう会えないの?』と尋ねてしまう心の豊かさを無くさないでほしいなあと思いました。