背負っている人、いない人にとっての仕事

仕事について若気の至りな馬鹿馬鹿しい昔話をしますが、それまで働いていた洋服仕立店の最年少店長(24歳・店長手当20円)の職を金にならんし割に合わんという理由で捨てて、とある社長夫婦と息子が在籍する家族経営の派遣会社の内勤に転職した私は、そこで結構ヤリ手でした。仕事の内容は『うちに登録しているバイトさんを、依頼主の職場に派遣する人』というもので、どんなに急な依頼でも私の手にかかれば他の担当者が交渉すると、バイトさんに断られるような場所でも必ず光速で人を探して当て込んで派遣する事ができ(バイト様様)、依頼主さんに対してもノークレームでいつも仕事を完了してましたから、先方の担当さんから『りまさんに対応お願いします』とご指名で仕事を頂くくらいで、そりゃあもう上司に可愛がられ後輩にも登録バイトさんにも信頼されていました。それはそれは自分でもそうとうイイ気になっておりました。


ですがその会社には一つ問題があって、それは経理部に在籍している社長夫人が他の部署にクチを出すような人でして、社内では正直あまり面白く思われていませんでした。ある時、私達の部署が中心となって社内総会の準備をする事になって、それはもう全員で資料作りだの当日の用意だの頑張って準備しました。そして総会前日、夫人が私達の部署に『経理部も手伝いますよ』とやってきたのはいいんですけれど私達の資料をみて案の定、口を出してきたのです。なかでもことのほか後輩が頑張って作った当日の参加者を把握する名簿や、名札などの受付の段取りが夫人には気に入らなかったようで『これでは総会当日の受付が混乱します。経理部が全面担当しますので、あなた方は座っていてください』と言うんです。後輩はショックで泣いてしまって、それを見た私が『混乱て大げさな。手伝う上で気に入らない所があるなら改善すればいい事で、それだけで全面担当ってのはおかしいですよ。手伝いにくる立場ならまず私達を立てるのが筋でしょう。』と今思えばオオバカな意見しまして、夫人はそれは失礼しました、とその場を引いてくれたので私てっきり話の解る人だと思っていたんですが、夫人が帰った後の部署では『りま、ヤバイよ。逆らっていい事ないよ。』の嵐となり、それでも私は『無くたっていいわよ。でも言わなきゃいけないときってあると思う』と強気、上司ひっくるめて『全く度胸無いわねあんた達』とまで言わんばかりに強気でした。


結局これがキッカケだったか、その後いろいろやんなっちゃって結果辞める事になるのですが、辞めるとき上司達が『守ってやれなくてごめんな。』とこっそり謝ってきて、私も背中にしょってるものが何も無かったから、自分は歯向かったりできたのは解ってるんですけど、この時に家庭とか何か背中にしょっていて簡単に下ろせない人達の、自分可愛さで何も言えない仕方無さを見た気がしました。我慢して我慢して働いてるんだなあと。そして『踊るの和久さん』がいう意見をするなら偉くならないと聞いてもらえないんだってのを実感しました。けれどその頃の私には、そんな我慢は無駄な事としか考えられなかったし、それがどれだけ子供じみてたかってのは歳をとってから振り返ってみないと解らないもので、でもまあ歳いってからそんな熱い事をして仕事を棒に振るよりは、若いうちに好きなように仕事にぶつかったりしてみてよかったかなと思います。


ということで仕事をしている人は毎日頑張っているのが解ってるから、旦那さんには朝家を出て行くとき『頑張ってね』とは言わないであえて『励んでね』と言ってきたのですけど、先日『朝っぱらからハゲって言わないでもらえるか』とお願いされまして『ハゲ・・・ぁっ 気をつけてね』になりました。旦那さんはハゲていません。念のため。